テキサス研究留学日記

テキサスに放牧された大学院生が博士号を取るまでの奮闘記と、その後の話。

テキサス研究留学日記のその後の話(前編)

こんにちは、Dr. Saitoです。

 

数日前の雨以降、テキサスはカラッとした爽やかな秋の空気に包まれています。今日でテキサスに戻ってきてからちょうど1ヶ月経ちます。

渡航前から色々バタバタしていてなかなか近況報告ができなかったのですが、ひとまずこちらでの仕事や住環境整備が落ち着いてきたので、テキサスの渡航が決まってから今日までのことを振り返りたいと思います。長くなったので3部構成です

  

テキサス渡航決定から準備まで

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事の始まりは、去年のテキサス研究留学中、

 

それはある日、嬉しそうにテキサスの指導教員が私のオフィスに飛び込んできた。 指導教員「お前を雇う研究費を獲得したんだ。博士をとったらテキサスに来ないか?」 私「…!」

テキサス研究留学日記(6)〜完遂編〜 - テキサス研究留学日記

博士取得後の就職先探しのタイミングがなく、どうしようかと考えていたところに、留学受け入れ先の教授からオファーがあり、無事進路が決まりました。

 

と言っても、正式なオファーはOffer letter によってなされるので、博士の学位を取得後の4月上旬にもらいました。4月からテキサス渡航までの間は、所属していた東北大学の研究グループでポスドクをさせていただくことになりました。Offer letterには勤務開始日が2017年6月1日からとなっていたので、2ヶ月で準備を済まして渡米することになりました。

 

前回のテキサス渡航はJ-1 visaで行いました。今回の渡航もOffer letterにJ-1 visaと記載されていたので、前回と同じ手続きということで安心して、テキサスの大学の国際科に渡航手続きと書類の準備について問い合わせをしました。

 

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ここで、旧J-1 holder に重要なお知らせですが、J-1 visaにはTwo-year-rule という、帰国後、最低2年間はvisaで渡米できないという規則があります。これは、J-1 visaが、あくまでも交換交流を目的としているためです。しかし、私のパスポートのJ-1 visaには、"Two-year-rule does not apply"と書いてありますので、今回の渡航には影響がないことを意味しています。

 

それにもかかわらず、大学の国際科からはこのような返事が来ました。

 

国「あなたはJ-1 visaで渡航することができません。」

 

俺「・・・」

 

さすがに訳が分からず、「どうせむこうが間違えているのだろう」と思いながら、Two-year-ruleについて、またそれが自分には当てはまらないことを丁寧にメールで説明しました。すると、

 

国「Two-year-ruleとは別に、一度J-1 visaを取得したら、次のJ-1 visaを取得するまで2年以上期間をあけないといけない。あなたは、まだ2年経っていないから、少なくともJ-1 visaでの渡米はできない。」

 

俺「!!!」

 

なんと、J-1 visaには別の”Two-year-rule”が存在していました(いや、単に私が知らなかっただけですが)。これは、Offerを出した大学側も把握している人は少なかったようで、受け入れ先からは急いで対応すると連絡が入りました。

 

こうして1週間後、大学から改めてOffer letterをいただきました。そこには就労ビザ(H1-B visa)での渡航と記載されていました。就労開始日は同年9月1日に改められました。それから程なくしてH1-B visaでの渡航準備が始まりました。

 

H1-B visaの手続きは、基本的には受け入れ先が行います。その中で、必要な書類を伝えられ、それらを準備して受け入れ先に送ります。通常、手続きには半年程度かかると言われていますが、多くの場合、受け入れ先が幾らかのお金を支払うことで、visaに関する手続きが数週間から1ヶ月程度に短縮されるPremium process にて手続きを行うことになります。

 

しかし、米国の政権が変わった翌年2017年4月3日、かの大統領はあろうことかPremium process を廃止しました。これで、状況は一転します。およそ半年かかるvisa手続きのために、できるだけ早く書類を集める必要があります。この時点で、半ば9月の渡航は諦めて、visa取得後できるだけ早い時期に行ければいいな(12月頃かな?)と考えていました。書類をかき集め、受け入れ先に提出したのが5月の末でした。

 

それからは、一時的にテキサス渡航の事を忘れて、東北大でのポスドク生活を楽しむが如く、研究に精を出していました。新しい研究分野に足を入れ、学ぶことが楽しくて仕方がありませんでした。

夢中になって解析を進めていた7月上旬のセミが鳴くある暑い日に、受け入れ先から連絡をいただきました。

 

受「就労許可が政府から出たからH1-B visaを取得してくれ」

 

俺「あれ、早くね?・・・」

 

研究が面白くなって来たところで嬉しいんだか悲しいんだかよく分からない感情が去来したことを覚えています。1週間後、H1-B visaに必要な書類がレターパックで送られて来て、7月下旬にアメリカ大使館でvisa 面接を受け、8月の上旬にH1-B visa付きのパスポートを受け取りました。

これで、いろいろありましたが、ようやく9月からテキサスで研究者として働くことができます。

 

いざ、渡米!

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東北大での研究は、結局終わらずバタバタとしながらも引き継ぎをして、いざ渡航まで数日となったところで、あるニュースを見ました。

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Hurricane Harveyがテキサス州沿岸部を襲い、大都市Houstonでは甚大な洪水被害が発生していました。

そして何を隠そう、私の航空チケットの行き先がそのHoustonだったのです。慌てて航空会社に確認したところ、もちろんその便は欠航。渡航数日前にDallas経由College Station行きの便に変更しました。また渡米当日には、妻がホテルに携帯電話を忘れてタクシーで空港とホテルを往復したりのドタバタ劇でした。 

 

「なんだか悪い予感がするな」

 

旅路につきながら、そう思わずにいられませんでした。

 

そして、その予感は程なくして見事に当たるのでした。

 

続く

 

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