テキサス研究留学日記(5)〜盛栄編〜
続きです。
アメリカ研究生活にも変化の兆し
テキサスにきて4ヶ月が経とうとしていたある日、研究同期の友人が隣国の学会に行く途中にヒューストンに立ち寄るとのことだったので、一緒に遊ぶことにした。これまで孤独との戦いだったので、お互いを良く知る同業者との会話は身体にこびりついたストレスを発散するのによかった。テキサスに来て起こったこと、お互いの近況報告など会話が盛り上がった。
少しずつ、歯車が回り始める。研究室では度々指導教員が自分のオフィスを訪れる。
指導教官「最近の進捗はどうだ?」
私「順調に進んでいます」
指導教員「そうか。Good. 」
仕方がない。だって見せられる結果が無かったのだから。こんなやりとりがここ3ヶ月以上進んでいたが、ついにたたき台となる解析ソフトウェアが完成し、新しい結果が出た。それは5月の暖かな日のことだった。
すると指導教員の言葉も変わってきた。
指導教員「最近の進捗はどうだ?」
私「(20秒程度で簡潔に新しい結果を述べる)」
指導教員「そうか。Great!」
たった一言の違いだったが、無機質なGoodに嫌気がさしていた私にとってはとんでもなく嬉しい言葉だった。ようやく、先生にも少しはできるやつだと認められたかな?徐々に自分が研究者としての自信をつけていくことがわかった。
それからは、指導教員はオフィスを訪れて進捗を聞くのではなく論文の準備をしろという言葉に変わってきたが、私は得られた結果をより詳細に解析したり、解析ソフトウェアのアップデートをしたりしていた。ダイヤモンドの原石を輝く宝石にするが如く 解析データの質を向上させんと一生懸命磨いた。それはもう、楽しくてたまらない期間だった。
真夏の青天の霹靂
気がつけば、テキサスの夏も盛る7月を迎えていた。
日本にいる指導教員とは月一回のビデオ会議で進捗報告をしていた。テキサスに渡航した当初は、これまでの研究のインパクト的にとても3年で博士課程を修了する ことが考えられなかったが、少しずつ、博士論文の話が出始めていた。この頃は、平日は研究を進めつつ、博士論文と、テキサスの研究の学術論文を執筆し、休日はしっかり休みつつテキサスの夏を満喫していた。といっても暑すぎるのでもっぱら屋内で過ごすのだが。
たまに休日に研究室に行っては自分のアイデアに従って解析を行うことが楽しかった。
私「こんな生活ずっと続くといいな。」
そんなことを思いながら、残り滞在期間が2ヶ月半となった8月のある日、事態は急変した。
4月に海外学振特別研究員に応募しており、 来年度の研究課題の採択合否を知らせるWeb画面がこんなことを言っていた。
「あなたは面接候補になりました。」
そしてその面接日を見ると9月…
私「ん?9月?」
あと2ヶ月半あった期間が瞬く間に1ヶ月半に変わった。テキサスに渡航する際の約束だった論文提出に暗雲が立ち込めてきた。ここから私の博士学生人生のものすごいラストスパートが始まるのであった。
続く。
ちなみに、海外学振特別研究員の面接はことらにまとめられています。