テキサス研究留学日記

テキサスに放牧された大学院生が博士号を取るまでの奮闘記と、その後の話。

写真をイジっていたら空が青い理由を理解できた話

こんにちは。Mr. Saitoです。今日は青空の話。

 

普段目にしている青空ですが、どうして青いのかと考えたことはありますか?

そもそも、太陽がある方向以外がどうして明るくなるのかという疑問が浮かぶと思います。

 

それは、太陽光が窒素や酸素などの大気分子によって散乱されるからです。だから太陽光差し込まない夜間は、それによる散乱が無いので、宇宙の彼方にある星や天の川が見えるというわけです。

 

でもここでまた一つ疑問が浮かびます。

 

太陽光は白色なのに、どうして散乱された光は青いのか?

 

この疑問に答えるために一枚の写真を引っ張り出してきました。これをじっくり見ていきます。

 

太陽光と大気分子が空の青色を生み出す

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この写真は、飛行機から撮影した空の写真です。海の青色、雲の白色、空の青のグラデーションがとても綺麗ですね。注目してほしいのは青空の部分です。大気中には窒素や酸素などの大気分子が豊富に存在します(どれくらいあるかというと、平均的に気柱積算*1で1013 hPaくらいあります)。

 

目に見える光は大気分子によってレイリー散乱*2(Rayleigh scattering)を引き起こします。

 

散乱された光がどうして青くなるのか?このレイリー散乱に関する一つの数式を導入します。

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これは、どのくらいの光が散乱されるか、その度合い*3を表しています。rは大気分子の半径、nは散乱を引き起こす媒質の性質を表しています。λは光の波長を表しています。

 

いきなり専門的になりましたね。ここからわかりやすく噛み砕いていきます。

 

いま、大気分子による散乱を見ているので、r, nについてはここの大気分子の大きさ性質はほぼ同じなので定数として無視しましょう。すると、波長λが残ります。

 

波長λは分母にあり、その分数は4乗されています。つまり、光が散乱される度合いは波長の4乗に反比例することがわかります。じゃあ、赤色の光と青色の光でどれくらい散乱される度合いが違うのか、その比をとってみましょう。

 

波長は青色の場合はおよそ450 nmくらい、赤色の場合はおよそ600 nmくらいとしましょう。 赤色の散乱の度合いに対してどれくらい青色の散乱が強いか求めるためには、赤い光のCを分母に、青い光のCを分子にして計算します。

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波長λ以外は全て同じなので、結局4/3の4乗となりますね!だいたい3倍です。よって、青色は赤色よりも約3倍程度散乱されやすいということが推測されました。ではそれを実際の写真をイジって確かめたいと思います!

 

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さっきの写真

 

この空の写真を赤色と青色に分解してみます。水平線付近の空にご注目ください。

  

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 上の写真が青色、下が赤色に分解した写真です。青色の水平線付近の方がぼやっとした印象ですよね。まさしくこれが、太陽光が大気分子によって散乱された光になります!赤色と比べると一目瞭然ですね!!

 

理論式通り、青色の方が強く光が散乱していることがわかりました。この理論を初めて導出したのがRayleigh卿。1871年のことでした。

今から145年前と考えると、結構最近ですよね。地動説で名を馳せたガリレオガリレイも400年位前の話ですものね。じつは、散乱は奥が深くて現在もなお新たな理論導出が活発に行われている分野なのです。

 

結論:空の色が青い理由は大気分子によるレイリー散乱の強度が波長の4乗に反比例しているから。

 

空が青いのは分かったけど、じゃあ夕暮れになるとどうして空が赤くなるの?

 

これについてはまた今度ゆっくり。

 

それでは!

*1:大気を高さ方向に積算した時の合計

*2:散乱には3種類あります。我々の目に見える光(可視光)の波長に対して大気分子は十分小さいので、レイリー散乱となります。

*3:専門的には「散乱断面積」といって、分子に向かって光の束が入射したときに散乱の効果を受ける面積を意味する。